【食品工場向け】HACCP対応はタブレットで記録!ペーパーレスで実現する衛生管理
食品工場の現場において、毎日の衛生管理記録やHACCP関連の帳票作成に追われていませんか。大量の紙帳票は保管場所を圧迫するだけでなく、手書き文字の判読不能や記入漏れといったリスクも抱えています。本記事では、タブレット端末を活用したペーパーレス化による解決策を解説します。単なるデジタル化ではなく、現場の負担を減らし、監査対応もスムーズにするための具体的な手法と、食品製造現場に適したデバイス選びのポイントをご紹介します。
※HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法です。 2018年に食品衛生法が改正され、日本では2020年6月から全ての食品関連事業者に対してHACCP導入が義務化されました。
目次
なぜ今、HACCP運用のペーパーレス化が必要なのか
食品衛生法改正によりHACCPに沿った衛生管理が制度化され、記録の重要性はかつてないほど高まりました。しかし、多くの現場では依然として紙の帳票が使用されており、それが業務効率を阻害する要因となっています。ここでは、紙管理が抱える構造的な問題点と、ペーパーレス化へ移行すべき理由を掘り下げていきます。
膨大な保管スペースと検索性の低さ
紙による運用を続ける最大のデメリットは、物理的な保管スペースの問題です。HACCPでは重要管理点(CCP)のモニタリング記録をはじめ、清掃記録、入室記録など多岐にわたる帳票が発生します。これらを法令で定められた期間保管するためには、広大な倉庫やキャビネットが必要です。
また、万が一クレームが発生した際や保健所の立ち入り検査時に、過去の記録を即座に取り出すことは極めて困難です。「いつ、誰が、どのラインで製造したか」を特定するために、段ボール箱をひっくり返して紙を探す作業は、非生産的であるだけでなく、迅速な初動対応を遅らせ、企業ブランドを毀損するリスクすらあります。デジタルデータであれば、キーワードや日付で瞬時に検索が可能となり、トレーサビリティの精度が劇的に向上します。
手書きによるヒューマンエラーと改ざんリスク
手書き記録には、どうしてもヒューマンエラーがつきまといます。忙しい製造ラインの中で急いで記入された文字は判読が難しいケースが多く、後から集計する際の誤入力の原因となります。また、未記入箇所があってもそのまま次工程へ進んでしまい、後から気づくというケースも後を絶ちません。
さらに重大なのが、記録の信頼性に関する問題です。紙の記録は、鉛筆や消せるボールペンで書かれていれば修正が容易であり、最悪の場合、実施していない検査を「実施した」として記録する改ざんも物理的に可能です。デジタル記録では、ログイン情報による「誰が入力したか」の特定や、入力時刻の自動記録、修正履歴の保持が可能となるため、データの真正性を担保しやすくなります。
集計・分析にかかる膨大な工数
日々の記録は、単に保管するだけでなく、傾向分析を行い、衛生管理の改善につなげることが本来の目的です。しかし、紙の帳票からデータをExcel等へ転記する作業には膨大な工数がかかります。この「転記」という作業自体が新たな入力ミスを生む温床にもなります。
管理者にとって、数百枚の紙をチェックし、ハンコを押すだけの作業に時間を奪われるのは本質的ではありません。ペーパーレス化によってデータが自動的にデータベースへ蓄積されれば、温度変化のトレンドグラフ作成や、逸脱が発生した際のアラート通知などを自動化できます。管理者はデータの入力作業ではなく、データに基づいた「改善アクション」に注力できるようになるのです。
タブレット活用で実現する衛生管理のメリット
前章で挙げた課題を解決するための手段として、タブレットやスマートデバイスの活用が非常に有効です。ここでは、具体的にどのようなメリットが現場にもたらされるのかを解説します。
リアルタイムな状況把握と迅速な是正措置
タブレットを用いた記録の最大の利点は、リアルタイム性です。現場担当者が入力したデータは即座にサーバへ送信され、管理者は離れた事務所にいても現場の状況をモニタリングできます。
例えば、加熱殺菌工程において温度が基準値を下回った場合、紙の記録では管理者が翌日に帳票を確認するまで発覚しない恐れがあります。しかしシステム化されていれば、異常値を検知した瞬間に管理者のPCやスマートフォンへアラートを飛ばすことが可能です。これにより、出荷前に製品を保留にする、直ちにラインを停止するといった是正措置を迅速に行うことができ、食品事故の流出を未然に防ぐことができます。
ワークフローの標準化と教育コストの削減
紙の帳票では、記入者によって書き方の癖が出たり、判断基準が曖昧になったりすることがあります。デジタルツール導入時には、入力フォームにあらかじめ選択肢を用意したり、必須項目を埋めないと完了できないように制御したりすることで、記録の標準化が図れます。
また、タブレット上に作業マニュアルや基準書(SOP)を写真や動画付きで表示させることも可能です。「この清掃はどうやるんだっけ?」と迷った際に、その場で正しい手順を確認できるため、新人教育の手間を大幅に削減できます。正しい手順をシステムがガイドしてくれるため、熟練者でなくても一定のレベルで衛生管理が行えるようになります。
画像記録によるエビデンスの強化
文字だけの記録には限界がありますが、タブレットにはカメラ機能が搭載されています。例えば、清掃後の状態や、原材料の入荷時の荷姿、異物混入があった際の現物などを写真に撮り、そのまま日報に添付して保存することが可能です。
「清掃しました」というチェックマークだけでなく、「清掃後のきれいな状態の写真」が残っていることは、監査において非常に強力なエビデンスとなります。また、テキスト入力が苦手な外国人労働者が多い現場においても、写真による報告は言語の壁を越えて状況を正確に伝える手段として有効です。
「家庭用タブレット」と「業務用専用機」の違いとは
HACCPのペーパーレス化を検討する際、「家電量販店で売っている一般的なタブレットで良いのではないか」と考える方も多いでしょう。しかし、食品工場の過酷な環境においては、家庭用デバイスではすぐに故障してしまうリスクがあります。ここでは、現場に適したハードウェア選定の重要性について、アイメックスの知見を交えて解説します。
水・油・粉塵への耐性(IP規格)
食品工場は、水洗いや消毒用アルコール、油ハネ、粉塵などが日常的に発生する環境です。一般的なタブレットは防水機能を持っていても、業務レベルの洗浄や薬品に対する耐性は考慮されていません。
一方で、業務用のタブレットやハンディターミナルは、IP65やIP67といった高い防塵・防水性能を備えています。濡れた手袋での操作や、アルコールによる頻繁な拭き取り消毒を前提に設計されているため、故障率が圧倒的に低くなります。また、落下に対する耐衝撃性能も強化されており、コンクリート床への落下リスクがある工場内でも安心して使用できます。IP規格について詳細はこちら。

バーコードリーダ機能の有無と作業効率
原材料の受け入れや使用記録において、JANコードやGS1コード、QRコードを読み取る場面は多々あります。一般的なタブレットの場合、背面のカメラを起動してピントを合わせ、読み取る動作が必要ですが、これは時間がかかり、暗い場所や汚れのあるコードでは読み取りにくいという欠点があります。
対して、業務用のAndroidハンディターミナルや一部の業務用タブレットには、専用の高性能バーコードリーダ(スキャナ)が内蔵されています。レーザーや高性能イメージャを使用しているため、読み取り速度が圧倒的に速く、ビニール越しのコードや多少のかすれがあるコードでも瞬時に読み取ることが可能です。1日に何百回もスキャンを行う現場では、この「1秒の差」が大きな生産性の違いとなって表れます。
供給期間とサポート体制
盲点となりがちなのが、製品の供給期間(ライフサイクル)です。コンシューマ向けのタブレットはモデルチェンジのサイクルが早く、1〜2年で同じモデルが手に入らなくなることが一般的です。故障して買い替えようとした時にサイズやOSのバージョンが変わっていると、使用しているアプリが動かなくなったり、専用ケースや充電器などの周辺機器(アクセサリ)を買い直したりする必要が出てきます。
業務用の端末は、数年単位での長期供給を前提としており、製造終了後も一定期間の修理サポートが保証されています。システムを長期的に安定運用するためには、こうした保守・サポート体制が整ったメーカの製品を選ぶことが重要です。
ペーパーレス化導入の具体的ステップ
実際にHACCP記録をタブレット化するための手順を解説します。いきなりすべてをデジタル化するのではなく、段階を踏んで進めることが成功の鍵です。
現状の帳票の棚卸しと整理
まずは、現在現場で使用されている全ての紙帳票を洗い出します。その上で、「本当に必要な記録項目は何か」「重複している内容はないか」を精査します。
紙の帳票をそのままのレイアウトでタブレット画面に再現しようとすると、入力しづらくなることがよくあります。選択式にする、自動計算を入れるなど、デジタル入力に適した形へ項目を再設計することが重要です。
適切なハードウェアとソフトウェアの選定
次に、現場の環境に合わせたデバイスを選定します。
- 水濡れが多いエリア: 完全防水・防塵の堅牢タブレットまたはハンディターミナル
- 手袋をして作業するエリア: 手袋モード対応のタッチパネル、または物理キー付きの端末
- バーコード入力を多用する工程: 高性能スキャナ内蔵のAndroid端末
同時に、記録を行うためのアプリケーションを選定します。近年はHACCP対応のクラウドサービスも増えていますが、自社の運用に合わせてカスタマイズが可能か、使用するハードウェア(プリンタやセンサなど)との連携が可能かを確認しましょう。アイメックスでは、ハードウェアの提供だけでなく、業務アプリ開発のパートナーとの連携や、既存システムへの接続に関するご相談も承っています。
現場トライアルと運用ルールの策定
システムが完成したら、一部のラインや工程に限定してトライアル運用を行います。実際に現場の作業者に使ってもらい、「ボタンが小さくて押しにくい」「通信がつながりにくい場所がある」といった課題を抽出します。
現場からのフィードバックをもとに改善を行い、操作マニュアルを作成した上で、全社展開へと進みます。また、機器の充電ルールや、破損時の連絡フロー、OSアップデートの管理方法など、運用に関するルールもこの段階で定めておきましょう。
Q&A
タブレットをアルコールで消毒したり、水洗いしたりしても大丈夫ですか?
はい、業務用タブレットの多くはアルコール拭き取りや次亜塩素酸ナトリウムなどによる消毒に対応しています。また、IP65やIP67といった防塵・防水規格を満たしている機種であれば、水ハネや濡れた手での操作はもちろん、機種によっては丸洗いも可能です。選定時に耐薬品性能についてもご相談ください。
衛生手袋や軍手をしたままでもタッチパネルの操作はできますか?
一般的な家庭用タブレットでは反応しないことがありますが、業務用端末には「手袋モード」を搭載しているものや、感圧式に対応しているものがあります。これにより、手袋を外すことなくスムーズに入力作業が行えるため、衛生面と作業効率の両立が可能です。
バッテリーが劣化した場合、交換はできますか?
はい。多くのコンシューマ向けタブレットはバッテリー内蔵型で本体ごとの修理や買い替えが必要ですが、業務用のタブレットの多くは、バッテリーパックのみを取り外して交換可能です。予備バッテリーを用意しておけば、充電切れで業務が止まる心配もありません。
まとめ
HACCP対応におけるペーパーレス化は、単なる「紙をなくすこと」が目的ではありません。データの正確性を高め、検索性を向上させ、現場の作業負担を軽減することで、より本質的な「食の安全」に注力できる環境を作ることが真の目的です。
一般的なタブレットでの運用に不安がある場合や、バーコードを活用してもっと効率的に入力作業を行いたい場合は、ぜひ業務用の専用端末をご検討ください。アイメックスでは、堅牢性、操作性、長期供給性を兼ね備えた多様なAndroidハンディターミナルやタブレット、そしてそれらを活用するソリューションをご提案可能です。
現場の環境や課題に合わせた最適な一台を見つけるために、まずは専門家にご相談いただくことをおすすめします。
本コラムでは、今後も皆様のお役に立つ情報の発信を続けてまいります。
投稿者プロフィール

- 業界27年のベテラン営業マン兼ライター。
積極的に海外からも良い製品を探してくるが基本的にはモノづくり大好き人間。
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