物流2024年問題の特効薬は『ハンズフリー』にあり。ウェアラブルスキャナ vs 音声ピッキング 徹底比較!
作業員が伝票を持ち替えたり、ハンディターミナルを置いたりする「数秒のロス」が気になりませんか?この積み重ねを解消するのがハンズフリー機器です。しかし「ウェアラブルスキャナと音声ピッキング、結局どっちが良いの?」という疑問の声もよく耳にします。今回はコスト、導入ハードル、作業効率の観点から両者を徹底比較。2024年問題を乗り越えるための最適な選択肢を一緒に探っていきましょう。

目次
物流2024年問題とハンズフリー化の重要性
2024年問題が物流現場に与える影響
労働時間規制による人手不足の深刻化
トラックドライバの残業規制は輸送能力の低下だけでなく、倉庫内の荷待ち時間短縮への圧力を高めました。限られた人員と時間内で出荷作業を完了させる必要があり、現場の負荷は増すばかりです。従来のやり方では対応しきれず、早急な省人化と効率化が求められています。今こそテクノロジーによる支援が不可欠な状況なのです。
生産性向上が急務となる背景
少子高齢化により新規雇用の確保は年々難しくなっています。熟練作業員の退職も進む中、経験の浅いスタッフでも即戦力として働ける環境整備が必要です。誰が作業しても一定のスピードと品質を保てる仕組み作りが、企業の存続を左右すると言っても過言ではありません。生産性向上はコスト削減だけでなく事業継続の鍵なのです。
ハンズフリー技術が注目される理由
作業動作の無駄を極限まで削減
従来のハンディターミナルでは「持つ」「置く」「画面を見る」という動作が頻繁に発生していました。ハンズフリー化により両手が自由になれば、商品の取り出しや運搬がスムーズになります。数秒の短縮でも1日数千回の作業では大きな時間創出となり、作業員の身体的負担も大幅に軽減されるのです。
「ながら作業」による効率化の実現
ハンズフリー機器は商品を手に取りながら検品を行うといった「ながら作業」を可能にします。思考や動作を中断することなく連続して作業できるため、リズムが生まれやすくなります。結果として集中力が持続しやすく、ミスの削減にもつながるという相乗効果が期待できるのです。
ウェアラブルスキャナの特徴とメリット
ウェアラブルスキャナとは
機器の形状と基本的な仕組み:アイメックス「WRS230」を例に
指や手首に装着する小型スキャナです。代表的なモデルとして、アイメックス株式会社の『WRS230』が挙げられます。これは指に装着するリング型で、わずか38gという驚異的な軽量設計が特徴です。スマートフォンや専用端末とBluetoothで接続し、指先のトリガを押すだけでデータを転送します。長時間着用しても疲れにくいエルゴノミクスデザイン採用で、作業者の負担を最小限に抑える工夫が施されています。
導入が進む主な業種と現場
部品点数が多い製造業のラインや、EC物流センターでのピッキング作業で多く導入されています。特にWRS230のようなリング型は両手が完全に自由になるため、商品を手に取りながらの検品や、箱詰めを行う梱包工程で威力を発揮します。既存のタブレットやスマホをそのまま活用し、入力デバイスとしてWRS230を追加するだけで「ハンズフリー化」が実現できるため、システム改修コストを抑えたい現場でも選ばれています。
ウェアラブルスキャナのメリット・デメリット
目視確認との相性が良い(メリット)
バーコードをスキャンした結果を、腕に付けた端末やスマートグラスで即座に目視確認できるのが強みです。型番や数量を目で見て判断する安心感があります。また、文字情報の指示が必要な複雑な作業フローにも対応しやすく、聴覚に頼らないため騒音環境下でも確実に作業が進められます。
装着感とバッテリ管理の課題(デメリット)
長時間装着することによる指や手首への負担が懸念されます。メーカによって装着感に差があるため選定には注意が必要です。また小型である分バッテリ容量に制限がある場合があり、長時間シフトでは交換の手間が発生することも。紛失リスクも据え置き型に比べると高くなる傾向にあります。
音声ピッキングの特徴とメリット
音声ピッキングとは
音声認識技術を活用した作業フロー
システムからの指示をヘッドセットで聞き、作業完了を音声で報告する仕組みです。「ロケーションA、3個」といった指示に対し「OK」やチェックディジットを声に出して応答します。ペーパーレスはもちろん、画面を見る必要がない「アイズフリー」を実現できるのが最大の特徴です。
導入効果が高い現場の特徴
冷凍冷蔵倉庫など、手袋をしていて端末操作が困難な環境で威力を発揮します。また、ケース単位での出荷や、カゴ車を押しながらのピッキングなど、常に両手をふさぐ作業が多い現場に最適です。視線を商品や通路に向けたまま移動できるため、安全性が向上する効果もあります。
音声ピッキングのメリット・デメリット
アイズフリーによる安全性と速度(メリット)
画面を見るために立ち止まる時間がゼロになります。視線移動が不要なため、商品の取り間違いや通路での衝突事故リスクが減ります。また、ハンディ操作を覚える必要がなく、音声の指示に従うだけなので、新人スタッフ教育にかかる時間が劇的に短縮されるのも大きな利点です。
バーコード情報の活用とコスト(デメリット)
全てを音声で完結させるため、バーコード情報(ロット番号や賞味期限など)の詳細な記録には不向きな場合があります。また、専用のシステム構築が必要になるケースが多く、ウェアラブルスキャナと比較して初期導入コストが高額になりがちです。認識精度の調整が必要な場合もあります。
【徹底比較】自社に合うのはどっち?
比較のポイント:商材と作業環境
バーコード管理が必須かどうか
賞味期限管理やトレーサビリティのために、全商品のバーコードスキャンが必須ならウェアラブルスキャナに軍配が上がります。音声ピッキングでもスキャナ併用は可能ですが、メリットが薄れます。逆に、ロケーション管理が主で、スキャンよりも移動とピック速度を優先するなら音声が有利です。
騒音レベルと通信環境
フォークリフトの走行音や機械音が激しい現場では、音声認識の精度が落ちたり、指示が聞き取りにくかったりするリスクがあります。最新のマイク技術で改善されていますが、事前のテストは必須です。ウェアラブルスキャナは騒音の影響を受けないため、環境を選ばずに導入しやすいと言えます。
比較のポイント:コストと導入ハードル
イニシャルコストとランニングコスト
一般的にウェアラブルスキャナの方が安価に導入開始できます。既存のハンディターミナルシステムを流用できる場合も多いからです。音声ピッキングは専用サーバやソフトウェアライセンスが必要になることが多く、初期投資は大きくなります。費用対効果を長期視点で計算することが重要です。
現場スタッフの受け入れやすさ
若手層はウェアラブル機器への順応が早いですが、高齢層は小さな画面や装着に抵抗感を示すことがあります。一方、音声ピッキングは「会話」に近い感覚で作業できるため、幅広い年齢層に受け入れられやすい傾向があります。ただし、独り言を言っているような感覚に慣れるまでの時間は個人差があります。
まとめ
本記事ではウェアラブルスキャナと音声ピッキングを比較しました。スキャナは「視認性・バーコード記録・低コスト導入」が強みで、細かい商材や騒音環境に向いています。対して音声は「アイズフリー・安全性・教育レス」が特徴で、ケースピッキングや低温環境で真価を発揮します。どちらも「両手が空く」という最大のメリットは共通ですが、解決できる課題の質が異なります。自社の商材特性と作業フローに合わせ、最適なハンズフリー技術を選定してください。本コラムでは、今後も皆様のお役に立つ情報の発信を続けてまいります。
投稿者プロフィール

- 業界27年のベテラン営業マン兼ライター。
積極的に海外からも良い製品を探してくるが基本的にはモノづくり大好き人間。




